2016年7月1日金曜日

日本の鉱山の概要① - まえがき

 かつて日本には多くの鉱山があり、そこには幾万人もの人々が生活していた。しかし、いま商業的に稼行している鉱山は1箇所しかない(1)。鉱山生活の歴史は記憶から薄れていくばかりであり、現在、鉱山の実態にふれることができるのは、観光地と化した鉱山史跡、鉱山歴史資料館のような展示施設、あるいは危険で近づくことに躊躇する鉱山設備の遺跡や社宅などの廃墟である。そこを訪れることは、鉱山生活体験者の多くにとっては過去への郷愁であり、未体験者にとっては未知空間への疑似体験訪問であろう。
 民俗資料館などに展示されている写真は貴重であるけれど、そこに見るのは断片的な生活情景であり、鉱山生活全般に思いを馳せることは困難である。まして廃墟すら残存していない小規模の鉱山については、聞いたことがあるという記憶でしか残っていないことも多い。
 一つの小さな鉱山に触れる前に、まず日本の鉱山を包括的に捉え、どのような歴史があったのか、鉱山生活とはどのような状況であったのかを次回から概観してゆく。

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(1) http://www.smm.co.jp/corp_info/domestic/hishikari/kyoten.html.。
 因みに炭砿(坑内掘で石炭を生産する会社)は釧路コールマイン(株)のみである。
 http://www.k-coal.co.jp/index.html。