2019年3月20日水曜日

 『国字の辞典』を開いて、特に目的もなく頁を捲っていると「垪(は)」という国字に目がとまった。この国字は「塀の省画か。字書にみえず」とあり、岡山県の地名に使われていると記載してある。この字を見て頭に浮かんできたのが石偏の「硑」なる字で、「ずり」と覚えている。「ずり」は鉱石とともに掘り出された不要な石のことで、『宮田又鉱山誌』にある地図には選鉱場に隣接して「硑捨場」が示されている。鉱山に生活していた者として「ずりすてば」と読むのは当然のことで、何の迷いもなかった。ただ、漢字はATOKの文字パレットから拾っていた。
 「硑」も国字かと思ったが、『国字の辞典』には載っていない。「硑」は『字通』にも載っていないし、刊本『漢語林』にも載っていない。「ずり」は『大辞林』にあるが漢字は表記されていない。じゃあ何なのか、字源は何かと思い、手持ちの辞書類およびインターネットでちょいと調べてみた。
 インターネットでは簡単には「硑」は出てこない。「ずり」も「硑」に結びつけているサイトは少なく、あったと思ったら自分のブログだったりした。電子辞書で見ると「新字源」では訓読みは示されておらず、字音の一つに漢音でホウ(ハウ)、呉音でヒョウ(ヒャウ)とあり、それは「砰」と同じとある。そして「砰」は「音の形容。ひびき渡る音。雷のような、とどろき渡る音」とある。『字通』には、「石のうちあう音、石が当たる音、崩落する音などをいい、擬声的な語であろう」とある。勝手に推定すると、石がゴロゴロととどろき渡るような音をたてて転げ落ち、角が取れて平になる様から「砰」となるのかもしれない。これはまるで「ずり」そのものではないかと自分の見解に得心する-自惚れでもあるヵ。だが、「ずり」を「硑」とする権威ある書籍はないのか。と思ったら灯台下暗しだった。手許にある簡便な辞書、『新明解国語辞典』(第5版)にはちゃんと書いてあるではないか。すなわち、「ずり【砰】①掘りくずして坑外に運び出す土。②捨ててある鉱滓。ぼた」とあり、「「硑」とも書く」と明確に書かれている。
 これで自分ではすっきり。PCで使用しているATOKには「硑」は登録しており、「ずり」と入力してスペースキーを押すと”正しく”「硑」と変換される。・・・狭い自己満足の世界。

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