2017年3月8日水曜日

山本有造 『「お雇い」鉱山技師エラスマス・ガワーとその兄弟』

<山本有造 『「お雇い」鉱山技師エラスマス・ガワーとその兄弟』(風媒社、2012年)>:幕末・明治初期にガワー3兄弟が日本の歴史に現れる。教科書に載る著名人ではないが、次男エラスマスは鉱山技師として各地に資料・文書が残っているらしい。北海道の炭砿、佐渡金山、高島炭砿にて日本の鉱山発展に貢献している。しかし、技術の導入にあたっては設備の稼働や完成は彼が日本を去った後に別人の名で成され、他のお雇い外国人ほどには著名でない。3兄弟の中ではエラスマスがもっとも遅い1866年(慶応2)に日本・箱館に登場し、1880年(明治13)に離日している。1886年には病気療養で伊香保にあしかけ3ヶ月滞在しし、1903年にイタリアで亡くなっている。生地も亡くなった地もイタリアであるが、イギリス人である。
書名に「鉱山技師」の名を見つけ、それで購入して読んだのであるが、鉱山史あるいは鉱業史のような内容は薄い。著者は著名な学者であるようであり、明治期の歴史の中にガワー/ガワル/ガールの名が複数記録されており、その複数のガワーとは一体何物なのかを研究した。それがこの本である。ブックレットではあるが、丁寧な研究書である。
アーネスト・サトウや長崎のガリバー、あるいは幕末のシーボルトなどと同じくエラスマスも日本に子孫を残している。「the Yatoi」は「お雇い」を意味する言葉として海外でも通用するとは初めて知った。